2025/09/16
DX
電子棚札の市場規模推移と2030年までの成長見通し:主要プレイヤー動向と小売DXの実態
目次
はじめに:電子棚札市場の結論と全体像
結論:電子棚札(ESL)市場は世界で年率13〜18%前後で拡大しており、2024年時点の推計は約16〜19億ドル、2032〜2033年にかけて50〜75億ドル規模へ成長が見込まれます。ばらつきはあるものの、米国の大規模チェーン導入(Walmart等)を起点に、物流・在庫最適化、食品ロス削減、最低賃金上昇への対応が成長ドライバーです。
市場規模の推移:主要調査の比較レンジ
各社推計の値幅を理解しやすくするため、基準年・予測年・CAGRを横並びで示します(USD)。
出典 | 基準年 | 市場規模(基準年) | 予測年 | 予測規模 | CAGR |
---|---|---|---|---|---|
Grand View Research | 2024 | 1.85B | 2033 | 7.54B | 17.4%(2025-2033) |
Mordor Intelligence | 2025 | 1.97B | 2030 | 3.78B | 13.9% |
Global Market Insights | 2023 | 1.61B | 2032 | 5.43B | 14.7% |
Coherent Market Insights | 2025 | 1.60B | 2032 | 4.54B | 16.1% |
※推計差は、対象範囲(ハード/ソフト/サービス)、ディスプレイ種別(LCD/フルグラフィックePaper)、流通含有の有無で生じます。上記から、2024〜2025年の世界市場は約16〜20億ドル、2032〜2033年は約50〜75億ドルがコンセンサス帯。
日本市場の現在地
日本は2024年時点で約4,730万ドル、2033年に約2.95億ドル(CAGR約22.9%)の高成長予測。人手不足・最低賃金上昇・値付け頻度の多さ(季節/販促/軽減税率)と親和性が高く、コンビニ・GMS・ドラッグで浸透が進みます。
成長ドライバー:なぜ今、ESLなのか

① オペレーション効率と人手不足対策
価格改定の一括反映、ピッキング支援、欠品アラートなどで作業時間を大幅削減。米Walmartは2026年までに2,300店へ拡大予定と公表し、北米での量産・調達スケールが進行中です。
② サステナビリティ(紙/インク・食品ロスの削減)
紙の値札・販促物の削減は当然として、AI補助の値引き最適化で廃棄ロス低減に寄与。米国では「タグ=ダイナミックプライシングで値上げ」という懸念に対し、近年の研究は価格暴騰の有意差を示さない結果も出ています(むしろ割引頻度は微増)。
③ 技術面の追い風(ePaper・BLE・クラウド)
バッテリー寿命の長いePaper、BLE/2.4GHzでの低消費電力通信、クラウド一元管理が標準化。北米売上比率を51%まで高めたVusionGroup(旧SES-imagotag)の大型案件進展は量産・価格の下押し要因です。
主要プレイヤーと導入トレンド
グローバル:VusionGroup/Pricer/SoluM など
・VusionGroup:Walmart向け契約拡大を発表。米国フリート4,600店全体に拡張する計画(段階的)で、EdgeSense/VusionCloudを梃子に周辺ソリューション連携を強化。
・Pricer:年次報告(2024)を開示し、大規模小売への安定供給体制を継続。
・SoluM:サムスン系発祥の量産力を背景に、ESL以外領域も含め拡張投資。
日本:コンビニを中心にPoCから量的展開へ
・ファミリーマート×Panasonic:実店舗での電子棚札/店内センサー等の統合検証(神奈川・佐江戸店)で、約2,000枚規模の電子棚札活用や運営省力化を確認。
・ローソン:店内光発電×電子棚札の実証を開始(グリーンローソン)。電池交換の負荷軽減を狙う新アーキテクチャの試行。
今後の展望:2030年に向けたシナリオとリスク
ベースライン(最頻レンジ)
・世界:2030年前後で約35〜45億ドル規模(複数社予測の中央値帯)。北米の大型チェーン横展開+欧州の入替需要が牽引。
・日本:2030年前後に約1.5〜2.0億ドル規模を想定(GVR2033見通しの途中値で近似)。コンビニ/GMS/ドラッグの採用拡大に加え、ホームセンター/専門店の波及で底上げ。
上振れ要因
・米国メガリテールの展開前倒し、店舗内IoT(カメラ・在庫センサー・ピッキング)の統合でROIが加速。
・ソーラー/エナジーハーベスト型デバイス普及により保守コスト低減。
下振れ要因・留意点
・ダイナミックプライシング懸念への規制議論(州法案など)が拡大する場合、導入の意思決定が遅延。
・現場実装の品質・運用設計が不十分だと、タグ脱落/破損などで逆効果。大規模ロールアウト時の施工
・教育は要投資。

導入ROIチェックリスト(現場で外さないために)
- 価格改定頻度(週/日/時間帯)とSKU数、現在の人件費単価を基に、年間工数削減額を試算
- ピッキング誘導・棚画像認識(カメラ/AI)連携の有無:作業ミス率・欠品率改善を数値化
- 電源設計(電池/エナジーハーベスト)と保守計画:交換サイクル・廃棄費・環境配慮
- ネットワーク(BLE/RF/IR)干渉対策:既存Wi-Fi/センサーとの共存検証
- クラウド管理機能とアラート:一元監視、棚割り変更のSLA、監査ログ
- レギュレーション対応:総額表示/軽減税率/値札視認性ガイドライン
用途別の適性と優先度
業態 | 適性 | 優先導入棚 | 効果のポイント |
---|---|---|---|
コンビニ | 高 | 日配/惣菜/季節棚 | 改定頻度が多く、廃棄ロス抑制・夜間作業削減 |
GMS/スーパー | 高 | 生鮮/加工食品/飲料 | 販促連動・時限値引き・在庫連携の効果が大 |
ドラッグ | 中 | 価格競争SKU/季節商材 | 競合価格追従と回遊導線の最適化 |
ホームセンター | 中 | 季節/大型SKU | 作業距離の短縮と棚替え省力化 |
導入時のKPIテンプレート
- 値札関連工数:導入前後で△70〜90%(社内計測)
- 価格表示不一致率:△50%以上(監査ログ/客通報)
- 食品ロス率:時限値引き連動で△10〜20%
- 投資回収期間:18〜36か月(SKU数/改定頻度に依存)
まとめ
電子棚札市場は、2024年の約16〜19億ドルから2030年前後に35〜45億ドル、2032〜2033年に50〜75億ドルへ拡大が見込まれます。米大型小売の全店展開、日本の人手不足・法制度に適した需要が追い風。成功の鍵は、施工品質・ネットワーク設計・クラウド運用・値引きロジックの4点最適化です。
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